ミステリーランチ・テラフレームの
フィロソフィー
「本当に質の高いバックパックとは何か? その“もっとも厳格な答え”を知っているのはおそらく、日々、過酷なフィールドに身を置き、使命を果たすプロフェッショナルたちだ。クライマー、ファイヤーファイター、ソルジャー、ハンター……こうした常に最高レベルを要求する『世界でもっとも厳しいカスタマー』たちが、ときに自らの生命をも預ける“相棒”のつくり手として、緑豊かな米モンタナ州の小さな街ボーズマンで生まれた〈ミステリーランチ〉を選んでいる理由とはいったい、何だろうか?」――これは、2015年に刊行された『MYSTERY RANCH BOOK』の冒頭に書かれている一文である。
なぜ、ミステリーランチを選ぶのか。それも、その道のプロフェッショナルたちが。
ミステリーランチがミステリーランチである所以は、ともするとこの問い掛けにすべてが詰まっているのかもしれない。創業者のデイナ・グリーソンがボーズマンでものづくりを始めたのは1975年のこと。以来、45年に渡る歳月を経てもなおその情熱は絶えることなく、多くの仲間たちを集め、いまへと続いている。クレッターワークス、デイナデザイン、そしてミステリーランチ。アウトドアカルチャーの最前線でデイナが追い求めてきたバックパックの数々は、常に革新的であり、使う人のことを第一に考えて手掛けられてきた。バックパックメーカーとしての使命は「人間の身体にどうやって荷物を背負わせるか」であり、そのための試行錯誤を繰り返し、信念を貫き通した。ゆえに、デイナの製品は世界中で支持され、現場で本当に必要とするプロフェッショナルたちの必需品ともなっている。
今回、特集する「オーバーロード機能」は一見、特異なシステムにも思えるものの、じつはデイナの持つものづくりの哲学からは1ミリもズレてはいない。バックパックはただ単に物を入れられればいいのではない。荷物がどう収まり、長い距離をいかに安定して運べるのかがポイントとなる。そのために必要なのは、どんな構造なのかを突き詰めていく……。その先にあったのが、オーバーロード機能である。「超重量」を担ぐという行為のために不可欠な、ミステリーランチ独自のテクノロジーが生み出されたのだ。
ミステリーランチがミステリーランチである所以は、ともするとこの問い掛けにすべてが詰まっているのかもしれない。創業者のデイナ・グリーソンがボーズマンでものづくりを始めたのは1975年のこと。以来、45年に渡る歳月を経てもなおその情熱は絶えることなく、多くの仲間たちを集め、いまへと続いている。クレッターワークス、デイナデザイン、そしてミステリーランチ。アウトドアカルチャーの最前線でデイナが追い求めてきたバックパックの数々は、常に革新的であり、使う人のことを第一に考えて手掛けられてきた。バックパックメーカーとしての使命は「人間の身体にどうやって荷物を背負わせるか」であり、そのための試行錯誤を繰り返し、信念を貫き通した。ゆえに、デイナの製品は世界中で支持され、現場で本当に必要とするプロフェッショナルたちの必需品ともなっている。
今回、特集する「オーバーロード機能」は一見、特異なシステムにも思えるものの、じつはデイナの持つものづくりの哲学からは1ミリもズレてはいない。バックパックはただ単に物を入れられればいいのではない。荷物がどう収まり、長い距離をいかに安定して運べるのかがポイントとなる。そのために必要なのは、どんな構造なのかを突き詰めていく……。その先にあったのが、オーバーロード機能である。「超重量」を担ぐという行為のために不可欠な、ミステリーランチ独自のテクノロジーが生み出されたのだ。
すべてを支える強靭なる
カーボンフレーム
ガイドライトMTフレーム
テラフレームシリーズやソートゥースなど、オーバーロード機能を持ったモデルに使われる特別なフレーム。従来のガイドライトフレームをベースに改良を施し、さらなる背負い心地と安定性を向上させている。
テラフレームシリーズに使用されているフレームは、「ガイドライトMTフレーム」である。これは、従来の「ガイドライトフレーム」の改良版。そもそもガイドライトフレームとは、ハンティングシリーズをデザインするにあたり開発されたテクノロジーであり、荷重分散と力の伝達を効率よく生み出すハーネス/フレームシステムとして知られてきた。その名品をベースにさらなる改良が施されたフレームで、オーバーロードしている状態でも通常の状態でも、つねに安定した背負い心地を実現する。
おもな改良点はショルダーハーネスおよびランバーラップシステム(腰回りの構造)の刷新とSJバックルの採用にある。ショルダーハーネスは従来のものに比べ左右の幅がやや狭まり、アジア人の体型にもよりフィットしやすくなっていて、腰回りは5つのブロックに分かれたパッドが立体的に腰に密着することで、荷重のほとんどを安定して”腰で担げる”ようになっている。SJバックルは高強度かつ軽量なバックルだ。フレーム本体に使われているのはカーボンファイバーステイで、箇所によってバー(板状の棒)とロッド(円柱の棒)を使い分けることでしなり具合をコントロールしている。それらを引き裂き強度、引っ張り強度ともに非常に高い500デニールCORUDA®ライトプラスファブリックで包み込んである。
このような構造により、全体的に高い剛性と柔軟性を併せ持った構造体が完成した。じつに67kgにおよぶ大荷重をも許容する。ちなみに、垂直方向の剛性は荷重を腰で安定して担ぐために、捻じれ方向の柔軟性は上体の動きを妨げないためにとても重要なのである。
ガイドライトMTフレーム
テラフレームシリーズやソートゥースなど、オーバーロード機能を持ったモデルに使われる特別なフレーム。従来のガイドライトフレームをベースに改良を施し、さらなる背負い心地と安定性を向上させている。
背面長の無段階調節
ミステリーランチの特徴でもあるフューチュラヨーク・システムを、このフレームにも使っている。フレームとショルダーハーネスが完全に独立した構造になっており、ベルクロで結束されているため、無段階での上下スライドが可能に。
絶妙なるカーブとフレームシート
このフューチュラヨーク・システムの肝ともなるフレームシートは、背面長を調整するときにはツールとして使うが、普段はヨークのスリーブにしまい込まれている。背中のカーブに合わせた形で湾曲させており、しっかりとフィットする。
ウエストベルトの傾斜
構造を示した左の写真を見てもわかるように垂直なフレームに対して、腰にあたるパッド自体に下向きの傾斜を持たせている。これは、パックがどんな状態でもウエストベルトがつねに腰回りに沿って固定されるための仕組み。
品質管理ラベル
個体それぞれの製造にまつわる情報が記されている。ミステリーランチの徹底した品質管理を象徴している。
オーバーロード機能とは?
上記のガイドライトMTフレームなど、すぐれたフレーミング技術が生み出した安定した背負い心地があるからこそ、オーバーロード機能が成り立っている。オーバーロードとは、日本語にすれば「定員超過」「過負荷」といった言葉となるが、この場合は「プラスアルファの荷物を運ぶ」ための特別な機能ということになる。そもそもがハンティングやミリタリーなどでの必要性から生まれた技術であるが、山やアウトドアといった側面からの要望も多く、一般向けにも搭載されるにいたっている。
では、この機能を使うのは、いったいどんなシーンなのだろう? そう想像をするだけでも胸躍る思いがあるが、たとえば、フィールドカメラマンがペリカンケースや三脚を入れる、ロングトレイルハイカーが濡れそぼったテントを挟み込み、リバーカヤッカーがインフレータブルカヌーを丸め込む……使い方は自由自在である。オーバーロードで大きな荷物を挟み込んで使っても、ぺったんこにしてふつうのパックとして使っても、その背負い心地に差が生まれることがない。この安定性と安心感は、ミステリーランチならではのもの。そう考えると、むしろ、ユーザーたちがこの機能をどうやって活用するのかできるのかが、問われているのかもしれない。
ちなみに、オーバーロード機能の合言葉は“GO Ahead, Bring More.” である。
overload
front
side
back
運べる量はどれくらい?
実際に撮影時に挟み込んでみたのは、ヒルバーグの2人用テント、ヘリノックスのコットにペリカンケース、チャコのサンダルにシアトルスポーツのソフトクーラ、ベアボーンズのハンドアックス。オーバーロードでは、これだけのものがきれいに収まってしまう。
オーバーロード機能のしくみ
パック本体とフレームの結束は、バックルとストラップのみ。よって、オーバーロード機能を活用するときは側面と上部のバックルをリリースし、本体との間を左右に広げるようにする。空いたスペースに荷物を詰め、それぞれのストラップでコンプレッションを掛ければOK。(※テラフレーム65と80には、下部にもバックルあり)
プラスアルファの自由
ミステリーランチのさらなる魅力はプラスアルファのアクセサリー群の充実である。自分の好みによって何を加えるべきかを選べるうえに、パックに装着した際には抜群の安定性を発揮してくれる。ともすると、初めからパックデザインに組み込まれていたのではと思えるくらい。もともとの機能を拡張してくれるものもあれば、完全な外付けで新たなポケットや小物入れ、ボトルポケットにカメラケースなどもある。また、オーバーロード機能を使っているときに便利なアクセサリーなども備え、選択の幅が広い。
選べる容量、3モデル
ミステリーランチのオーバーロード機能は、はたしてどんなプロフェッショナルたちが使っているのだろう? ミュージシャン、ネイチャーフォトグラファー、アウトドアライター、アーボリスト、トレイル整備のメンバーと5人に迫った2020年の企画に加え、この度、新たな5人を選出。オーバーロードの世界観は留まることなく、さらにその先へと大きな広がりを見せていく。2021年は「低山トラベラー」に「アウトドアショップ・スタッフ」の2名、2022年はさらなる3人に……。どんな仕事のどんなシーンにオーバーロードが活用されているのか、それぞれの仕事の本質とスタンス、彼らの思考性をたどっていきたい。